27 材木を尾根まで移動
・まずは仮集積所まで運びます ここはススキのように芯の硬い草が多いうえ丈も長いので、あまり一度に多くは刈れません。黙々と少しずつ削るようにして草を刈って行きます。炎天下なのでたちまち体中に汗が吹き出してきますが、それでも広場の草刈と違ってやった分だけ徐々に道が長く伸びていくのはなかなか気持ちのいいものです。
草を刈る前の林道の様子です。 林内作業車が通れるようにするだけなのでかなり雑に刈りましたが、距離が長いのでこれだけで一日掛りました。 2011年8月14日 今回引っ越しする材木の数は全部で43本です。林内作業車で一度に運べる本数は重さや長さによりまちまちですが、結果的に全てを林道終点まで移動させるのに6日間掛りました。
歩行速度はかなりゆっくりなのですが、路面が荒れているので慎重に走路を選びながら進まなくてはならず気が抜けません。また運搬前後には丸太の積み下ろし作業も有りますので、大きい木材ですと1日に精々4、5本しか運べませんでした。
・ハプニング発生 原因はテンションローラーのツバが磨滅してベルトの横方向の押さえが効かなくなり、Vベルトがプーリーから外れたためでした。とりあえず工具を持ち出してテンションローラーの位置を横にずらし、ベルトが外れないように応急手当をして何とか最後まで走り終えましたがすぐに部品の交換が必要です。 黄色い部分に左側と同じようなツバが有ったのですが欠損していました。 ローラーのリンクには動きをスムーズにするため若干ガタが有りますが、ベルトを押さえる反力でガタの分だけローラーが傾きベルトに横方向の力が発生したのでしょうか?。 幸いにも、エンジン交換の際に使わなくなった高速プーリー用のテンションローラーが余っていたので早速それと交換しましたが、その修理の最中にVベルトの底ゴムが1ヶ所パックリと割れているのを発見しました。かろうじて芯線だけでつながっている状態です。 これはではいつ断裂するかもしれず危険なのですぐに予備と交換しました。 エンジンも載せ替え、ゴムクローラも新品に交換して引っ越し作業には万全を期したつもりでしたが、何かまだ他にも時限爆弾を抱えているような気がして不安が残ります。 ともあれ、更に安全を期すため今後はテンションローラーやVベルトの状態など始業前点検をしっかり行うことにしました。 ・次は尾根への引き上げです 運搬する時は長い材木が立木に接触しないように常に材木の先端と後端に注意を払って運転しますが、同時に木立の中で材木の動くスペースが無くなって身動きが取れなくなってしまわないように有る程度先を読んだコース取りをしなければなりません。 経験はありませんが、長いトレーラーを運転してコーナーを曲がるような感じです。 そして最大の難関はゴール直前の急坂です。距離は50m程ですが斜度が25度近くもありますので、特に重量物を搭載している時は急なクラッチ操作でクローラがスリップしないように慎重に運転します。
登坂では重心を通る荷重の作用点が後方へ移動しますので、これを考慮して荷物を積んでおかないと簡単に前が浮いて接地圧のバランスが崩れます。最悪の場合はクローラが地面をえぐり、その場でスタックしてしまいます。 ゆっくりと慎重に運転していきさえすれば基本的には問題ないはずですが、不安なのは急坂での駆動系の強度とトラクションです。
ゴムクローラも新品に交換してあるので切れる心配はまずありません。心配なのはVベルトです。実は前述したベルト切れのあとにも同様な不具合が再び発生しており、短時間に2度のベルト交換をするはめになりました。どうやらテンションローラーの押し付け圧力が強すぎたのが原因のようなので、Vベルトがプーリーにドッキングする限界ギリギリまでローラーの圧力を設定し直しましたが、正直この状態でどこまでVベルトの強度が持つのか全く予測出来ません。平坦な場所であれば何でもない故障ですが、登坂中に起きれば一大事です。 次にクローラのトラクションですが、一度限界を超えるとそこでゴムクローラが空転を始め、地面を掘るばかりで前に進めなくなってしまいます。また後退しようにもブレーキが無いのでクローラを空転させながらスロットル操作で降下速度をコントロールするしか手立てがありません。
まるで車を後ろ向きにドリフト走行させながらS字コースを走るようなもので、無事に降りるには相当なテクニックが必要です。
・さあいよいよ登坂を開始します。まずは比較的軽量な材木から順次運び上げていくことにしますが、万一に備えて運転操作は作業車の真後ろを避けて斜め後方から行います。
また即座に体が反応できるよう、登坂中は常に(Vベルトが)「切れたら逃げる」「切れたら逃げる」と頭の中で脱出動作をイメージして万一のアクシデントに備えていました。
順調に運び上げが進みますが、徐々に材木も太く重くなっていきます。10本目くらいまではエンジンの調子もトラクションにも特に異常は見当たりませんでした。 ところが材木の重量が増加するに伴いエンジンのスロットル開度も徐々に大きくなっていき、これまでほとんど使用したことの無いフルスロットル状態に近づいたころ、突然エンジンの回転が不安定になり、出力が上がらなくなってしまいました。 登坂途中でしたのであまり大きくスロットルを絞るわけにはいきません。少しだけスロットルを戻してエンジンの回転を落ち着かせ、何とか車両を停止させずに無事坂の上まで辿り着くことが出来ましたが、まったく冷や汗ものでした。 症状から判断すると、原因はどうやら全負荷での空燃比が少し薄かったようです。これまでは部分負荷状態でしかエンジンを回しておらず特に異常は感じられませんでした。
このシバウラエンジンはキャブレターの外側からメインジェットの径を調整する事が出来るので、こんな時は大変便利です。 他のエンジンでしたらキャブレターを分解してオーバーサイズのメインジェットを入手して交換しなければならず、数日間は作業がお休みになるところでした。 キャブレターの底部にあるノブを回すとメインジェットの径を変えることが出来ます。 キャブをばらさずに外から調整出来るので非常に便利です。 林内作業車で運び上げられる限界が分からないまま、徐々にハードル(運ぶ木材の重さ)だけが高くなっていきます。
条件が僅かづつしか変化しないので、作業車での運搬を中止するキッカケがなかなか掴めません。
1本引き上げる度に
作業車の能力には当然限界があり、全ての大きさの材木を運び上げるのは到底ムリです。このまま使い続けるのはまるでロシアンルーレットをしているようなもので、いつ「ドカン」とくるか判りません。早く見切りを付けて、事故が起こる前に別の安全な方法に変えなければいけません。
恐る恐る30本目を運び上げたところでついに作業車に依る搬送を断念し、ワイヤーロープとウインチで引き上げる事にしました。 いやー、少し決定が遅かったような気がします。(^_^;(反省) 架線の太さを計算するためには丸太の重量データーが必要なのですが、正確な数値が分からないので推測値で決めました。 丸太は端を両手で持って思いっきり引き上げると僅かに端が地面から浮き上がるくらいの重さなので、おそらく100~150㎏位ではないでしょうか? おやじも近頃はめっきり衰えていますので、恐らく人ひとりを持ち上げる位の背筋しかないと思います。(^_^; 吊り荷重を150kgと仮定し、安全率4、張力荷重比を10として計算すると太さ12mmのワイヤーロープが必要と出ました。 実際には架線に十分な張力を与えられるほど太くて丈夫な固定用の立木が運搬ルート上に見当たらないので、ロープウエイの様に完全な宙吊り状態ではなく、材木に車輪を履かせて半分荷車を引くような形で引き上げることにします。ですからもっと細いロープでも足りるのですが...! 引き上はRYOBIの吊上荷重200kgの電動ウインチ(上の写真の黄色いヤツ)で行います。エンジンウインチも所有しているのですが、材木の進行方向を変えながら一緒に坂を登らなくてはならないので、リモコンで操作できる電動ウインチで引き上げることにしました。ただしワイヤの有効長さが30メートルしかないので坂の途中で丸太を一旦停止させ、ウインチを再セットして2段回操作で引き上げなくてはなりません。 また100Vの電源が必要なので発電機を小型運搬車に搭載して(左の写真)坂の途中に配置し、そこから延長ケーブルでウインチに電力を供給するようにしました。 ウインチでの引き揚げ作業も無事に終了し、これで山小屋建設のための主だった準備作業は全て完了しました。 ここが尾根の材木置き場です。 山小屋はここの左手、少し離れた斜面に建てようかと考えています。 2011年10月19日 ところで、約3カ月間肉体労働したにも関わらず私の体重は全く変わっていません。 |
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