25 林内通勤用バイク

完成した道路は平坦な部分がほとんど無く、20度以上もある急勾配が何か所もあります。ですから、車を停めた林道から尾根の工事現場までの移動が結構たいへんな仕事になってきました。
食糧や資材など作業をする時に必要な物資は最初に全て現場へ運び込んでおいて、出来るだけ車や倉庫とは往復しないですむようにしていますが、急に必要な物が出てきたり、忘れ物をしたりするといやでも取りに行かなくてはなりません。これが結構しんどくて...やっぱり歳ですなぁー(^_^;

山仕事をするようになって多少は体力が付いたかと思えば すでに賞味期限まじかの老体は山仕事によって筋肉が鍛えられるどころか逆にダメージが蓄積するばかりです。

そんな訳で林内移動用の乗り物を造ることにしました。
ホンダのモンキーが長い間自宅のガレージで寝ていましたので、これをベースに造ることにします。 基本的なスペックとしては、クローラでさえ時として空転するような急勾配がありますので、強力なトラクションが得られるように後輪にバギー用の太くてパターンの大きなタイヤを履かせた3輪のATVにしようと思います。 また50ccの非力なエンジンなので登坂力を得るため最終減速比も徹底的に大きくします。

さっそくパーツの調達です。
まず最初に部品取り用にヤフオクで中華バギーの不動車を購入しました。
これの後部アクスルを取り外し、新たにスイングアームを製作してモンキーに移植します。


取り外した中華バギーのリヤアクスルです。
これをモンキーに移植します。


中華バギーのリヤアクスルを移植しました。
構造上の都合でサスペンションはモノショックになりました。
手元に有ったカヤバのガスショックをブラケットを新設して取り付けています。

減速比はフロントとリヤスプロケットの歯数を変えて対応します。
フロントはアフターマーケットでモンキー用の歯数の小さいのが簡単に入手できましたが、リヤはかなり探すのに苦労しました。 出来るだけ歯数が多くて取付面に穴の追加工が出来るだけのスペースがあり、なおかつインロー径が近いものとなるとなかなか適当な物が見当たりません。ネットで散々探しまくってやっとエイプ50用を改造することに落ち着きました。


上が改造仕様
フロント11T、リヤ45T
下がノーマル
フロント13T、リヤ31T

これでノーマルのほぼ倍の減速比になります。

エイプ用のリヤスプロケットと中華バギーのシャフトハブはインロー径もPCDも異なりますので改造が必要です。
参考までに中国製のパーツを使用する時の鉄則ですが、加工は必ず現物合わせで行います。さもないと確実に失敗します。メイド・イン・ジャパン製品の様にハブボルトの穴が取付ピッチの円周上に精度良く均等に加工されていると勝手に思い込んでいると痛い目にあいます。

公道は走らないので不必要な保安部品は全て取り外しました。
また、使用頻度が少ないので留守中のバッテリー上がりのトラブルを防ぐため、大容量のコンデンサーを充電回路に挿入してバッテリーレス仕様にしました。

中華バギーから移植したリヤのディスクブレーキも、マスターシリンダーをハンドルレバー形式から一般的な足で操作する形式に改造し、ついでに坂道駐車が出来るようにパーキングブレーキ機能を追加しています(2枚目の写真の黄色い部分、詳細は「いろいろ写真集」に)。


フロントに自転車のお買い物かご、リヤには中華バギーのキャリヤを移植して完成です。

取り外して不要になった部品はヤフオクで売却しましたので、改造費はトータル3,210円でした。

現地に持ち込んでいよいよ運用開始です。
最初に林道を少し走ってみましたが、後輪が左右独立懸架になっていないので横揺れが結構強烈です。 またデフが無いので旋回するときに前輪が流されて思ったように曲がってくれません。 まあ、登坂用の通勤車両ですので乗り心地はこの際ぜいたくを言わないことにしましよう(^_^)。

さて、いよいよ本題の坂道登坂に挑戦です。
非力なエンジンですが高ギヤレシオのおかげでトルクは十分です。しかしながら坂があまりにも急なため石を跳ねた時など一瞬でもリヤが空転すると、たちまちあの大きなバギータイヤがトラクションを失って地面に穴を掘り始めてしまいます。
こうなったら一旦引き下がり、途中で後輪が跳ねても前進速度が衰えないよう少し勢いを付けて再度アタックしなおしです。


山林への入り口です。ここから登っていきます。

地面は結構荒れていて、小石がいっぱい表面に浮いています。この小石が曲者で、タイヤ空転の引き金になったりします。
2011年7月17日

慎重にスロットルを操作し、先程スタックした地点をなんとかクリアして上へ上へと登って行きます。つぎの難関は坂道の途中に所々掘ってある排水用の横溝です。 体を前輪に覆いかぶせるように思いっきり前方荷重にして溝の通過を図ります。ところが前輪が勢い良く溝を飛越えて向こう側に着地した瞬間、いきなりモンキー君が体操選手の様にバック転を始めてしまいました。
今まで視界にあった坂道が回転していきなり青空に変わり、体がグルリと後方へもっていかれます。瞬間、頭の中に「このまま回転し続けてはマズイぞ!」と言う警告が聞こえるのですが、幅広の後輪が邪魔をして足を後ろにずらして態勢を変えることが出来ません。

「ヤバイ!」

モンキー君と一緒に転落するのを防ぐため、仰向けの体勢のままとっさにステップを天に向って蹴り上げ、モンキー君に巴投げを掛けます。後方へ坂が下っているのでうまく技が決まり、一瞬モンキー君と体が離れたところですかさず体を横にひねって恐怖の回転面から脱出。なんとか無事に車体から離脱して自身は坂の途中で止まることが出来ました。
しかしながら、モンキー君はそのままもんどりをうって坂道を転落していきました...(哀れ)

「あ~あ~!せっかく造ったのになあ。」

一度も活躍することなく、こうしてあえなくモンキー君はお払い箱となりました。あやうくモンキー君の下敷きになりかけたことよりもせっかくの作品が失敗したショックの方が大です...(泣)。
もうこの坂を登るにはトライアルバイクしか方法はなさそうです。

=後日談=
モンキー君には心配したほどダメージが無かったので、修理して売ることにしました。ヤフオクに出品したら3万5千円で売れました。
よっしゃ!これを元手にしてトライアルバイクを買うぞ!

=後後日談=
書類の無いホンダTLR200を1万円で手に入れました。
これなら多分大丈夫でしょう。
運転技術さえあれば(あればの話ですが)かなりの急こう配でも登れるはずです。チャンチャン♪♪

一応動きますが、外観は結構痛んでいます。
保安部品は全く付いていません。
一通り点検整備をしたら、荷物搭載用のキャリア類を作ってから山へ持っていこうと思います。